絣(かすり)から、デニムへ

西に尾道、南に瀬戸内海、中心部には城郭を擁する街、広島県福山市。古くから交通の要所として栄えたこの地の伝統工芸として知られているのが、日本三大絣の1つである「備後絣(びんごがすり)」。江戸時代末期に考案されたこの織物は、その美しさが人気を呼び、昭和中期にはこの産地で全国の7割の絣が織られていたという。
その染織りの技術は時代の流れとともに「絣」から「デニム」へと受け継がれ、現在JAPANデニムとして欧州の名だたるメゾンに採用されるなど、世界から注目を集めるものとなっている。

この先も、選ばれ続けるために

この福山の地でいま、世界からラブコールを受けている織元の1つが、創業110年の篠原テキスタイル株式会社。錚々たるアパレルブランドにデニムを提供していながら、「この先も選ばれ続けらなければらならない」と語る5代目代表・篠原由起氏からは、慢心する様子は1ミリも見られない。

自然由来の再生繊維テンセルを使った驚くほど柔らかい質感のデニムなど、既存のデニムの枠に囚われないものづくりで国内外のデザイナーの心を掴む。ものづくりのみならず、産地や業界の枠を超えた交流、地域への貢献活動など、その視点は常に先の時代を見据える。

3/1,000

PHAPHICの『SIGNITURE』シリーズでは、福山のショールームで全1,000種あまりのコレクションのなかからデニム3種をセレクト。空間のマテリアルとして適した意匠性と実用性を兼ね備えた3種のデニムは、いずれも素材は綿100パーセント。

瀬戸内の海を思わせる<インディゴブルー>は反応染により、色落ち抑制と意匠性を兼ね備えたもの。中間色の<フェードブルー>は、使い古したデニムや断裁くずを再生した綿糸を含み、独自の素材感を味わえる。

デニムのシグネチャであるダブルステッチを施し、プロダクトに仕立てるのは同じく福山市内で40年超の歴をもつ株式会社C2。

日本が世界に誇る産地でつくられたファブリック。
使い、洗い、を繰り返しながら、10年後も日々のなかに自然に在る。そんな存在となってもらいたい。

2024年12月時点の取材に基づき構成しています。

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