播州織とは

兵庫県の内陸部、山々と人の営みが交差する地、西脇市。
この地で230年以上の歴史を紡ぐ綿織物「播州織(ばんしゅうおり)」は、先に染めた糸を生地に織る「先染(さきぞめ)」という製法を特徴とする。
河川に恵まれ綿花栽培や染色に適したことから、かつては270軒以上の業社が軒を連ね、一大産地として栄えたという。
この産地内には、ここでしかない生地づくりを求め、現在も東京からデザイナーが6時間をかけて足を運ぶ機屋(はたや)がある。

「 唯一無二のものをつくる 」

その1つが、社員数わずか4名の機屋、大城戸織布(おおきどしょくふ)。3代目となる大城戸祥暢(よしのぶ)氏は、産地全体の繊維産業の縮小という現実に対し、「ほかにはない唯一無二のものをつくる」という解を出し、それをまさに体現する。量より質を徹底的に追い求め、他社がやらない技法や素材を取り入れる。高速化が求められるなか、あえて低速の古い織機を自ら修理・改良しながら取り入れる。「コスパ」「タイパ」といった価値観と真逆を行くものづくりが、ほかにはない豊かな生地の表情を生み出し、手に取る人の心を動かす。

「再現ではなく、表現」

「デザインを表面的に再現するだけじゃなく、デザインの世界観を織で表現したい」と語る職人、穐原(あきはら)氏の手により形となったPHAPHICの『AMBIENT』 。1日に20mほどしか織ることができないこの生地は高密度でありながら、肌触りはやわらかい。変則的なラインはジャカード織で立体的に表現され、鮮やかに先染めされた綿糸の交差により、表と裏の2面の表情をもつ。綿糸の素材感をそのまま生かした大城戸織布独自の仕上げ加工により、その風合いは機械織ながらクラフトを感じさせる。

伝統の系譜を引き継ぎながら、職人の創造性によって新たな挑戦を続ける播州織。
その可能性を、生地を通して感じてもらいたい。

2024年11月時点の取材に基づき構成しています。

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