世界のメゾンブランドにデニムを提供する企業でありながら、PHAPHICが形になる前からお取引をくださっている篠原テキスタイルさん。PHAPHICデザイナーと同年齢の5代目・篠原由起社長は、気さくな人柄と広い視野から、工場や産地を常にオープンなものにされています。日本が誇るデニム産地を率いる1人として、産地について、現在の想いについて、お話を伺いました。
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ーーー 絣(かすり)を祖業として創業117年、現在のデニム製造のスタイルに至った背景を教えてください。
日本人の装いが和装から洋装に変わり、もんぺが不要になっていった。綿を天然藍染する備後絣でもんぺを作ってきたのが、同じ綿を合成インディゴで染めるデニムへ移っていった、というのが大きな流れです。1970年代に産地内でデニム用のインディゴ染めができるようになり、産地の備後絣を織る機屋がデニム製造へと徐々に切り替わっていきました。
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ーーー 米国から発祥したデニムカルチャーですが、JAPANデニムが世界から注目され、選ばれるようになってきた経緯についてお聞かせください。
他のアジアの生産地と比べると、JAPANデニムは1)糸のバリエーション、2)染め色の豊富さ、3)織りの品質が優れている。この3つの掛け合わせによって、「今までのデニムで見たことのない表現」と評価されています。
ーーー 篠原テキスタイルさんが得意とされているテンセルデニムもそのひとつでしょうか。
そうですね。シーツに使われているくらい柔らかいので、特に展示会などで実際に触ってみて気に入っていただけることが多い。デニムというとアメカジ、ごつい、という印象が強いですが、そういったものに興味のなかったようなお客様にも好まれています。
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ーーー 改めて、このJAPANデニムの産地についてお聞かせください。
福山市は行政区分は広島ですが、隣の岡山と日常的に仕事のやりとりをしています。この岡山〜広島にわたる三備(さんび)地域と言われるエリア、備中・備前・備後産地がいま国内唯一最大のデニム産地となっているのが現状です。この産地がそうあり続けるために、もっともっと産地のこと、デニムとは何か、を知ってもらいたい。そのために色んなところに足を運んで、顔を出して。昨日は播州に意見交換会に行ってきたところです。
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ーーー 他産地や他産業との交流、福山シティFCのスポンサードなど、さまざまな活動をされている篠原さん。日頃から意識されて取り組まれているのでしょうか?
一社だけで、同業社だけでやっていても知見が広がらない。産業だけでなくスポーツや音楽、色々な接点を持つことで新しい視野が広がる。意識してやっているわけではないですが、産地の分業のなかで織だけをやっていたらこの先なくなるかもしれない、という想いから、この先何ができるかは常に探しています。大阪の紡績会社勤務時代の上司の影響を受けているところは多分にありますね。糸屋の営業でありながら、アパレルに直接営業してお客さんを付けて機元に販売するような方でした。
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ーーー 織元として、産地として。この先10年、20年後の展望をお聞かせください。
この産地の認知度をもっとあげていきたい。一般の方が服を買う時に、この生地がどこで織られているかを見てもらえたら。愛媛のみかん美味しそう、みたく福山産のデニムパンツ良さそう、と感じてもらいたいですね。PHAPHICさんを通して福山のデニムに興味をもってくれたお客さんを連れて、ぜひまた産地に遊びにきてください。
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写真:yukihiro yoshikawa
聞き手:studio Phaphic
篠原テキスタイル株式会社 https://www.shinotex.jp/